この記事では、アーマチュアで動きをつける簡単なアニメーションを制作します。 アーマチュアは、メッシュに埋め込む骨格のことです。
埋め込んだアーマチュアの関節を曲げることでメッシュを変形させることができます。 人間や動物のような、実際に骨格を持つ生き物のモデルに動きをつけるには最適な機能です。
なお、アーマチュアを構成する骨のことをボーンと呼びます。 1つ以上のボーンが集まったものがアーマチュアです。 ちなみに、アーマチュアはオブジェクトです。
クマのキャラクタがお辞儀をし、その後、手を振ります。 フレーム数は100とし、50フレーム目でお辞儀を終え、51フレーム目からは手を振ります。
クマのメッシュは、本ウェブサイトで用意したものをダウンロードして使用します。 この記事はアーマチュアの解説が目的であり、モデリングの解説が目的ではないためそのような手順にしました。
まず、アーマチュアを作成し、必要なボーンを追加します。 次に、アーマチュアの各ボーンの名称を変更します。 さらに、作成したアーマチュアをメッシュに埋め込みます。
続いて、アーマチュアの関節を曲げてメッシュに動きをつけ、ボーンの位置と回転量と拡大縮小率のキーフレームを登録します。 『1フレーム目はこの位置と回転量と拡大縮小率』、『50フレーム目はこの位置と回転量と拡大縮小率』というように、ボーンの位置と回転量と拡大縮小率のキーフレームを登録していきます。
| フレーム数 | 動き | 
|---|---|
| 1フレーム目 | 直立姿勢 | 
| 25フレーム目 | お辞儀をした姿勢(最も頭が下がった位置) | 
| 50フレーム目 | 直立姿勢 | 
| 60フレーム目 | 右手を上げた姿勢(斜め上) | 
| 70フレーム目 | 右手を上げた姿勢(真上) | 
| 80フレーム目 | 右手を上げた姿勢(斜め上) | 
| 90フレーム目 | 右手を上げた姿勢(真上) | 
| 100フレーム目 | 直立姿勢 | 
では、実際にアニメーションを制作しましょう。 まずは、以下のファイルをダウンロードしてください。 本ウェブサイトで用意したクマのメッシュのファイルです。
ダウンロードした "bear.zip" を展開すると "bear.blend" というファイルが作成されます。 トップバーのプルダウンメニューの"File" -> "Open..."を実行して "bear.blend" を開いてください。
まずは、アーマチュアを作成します。 作業はオブジェクトモードで行います。 アーマチュアは、オブジェクトモードでなければ作成できないからです。 なお、クマは選択されていても選択されていなくても、どちらでも構いません。
では、アーマチュアを追加しましょう。 キーボードのSHIFT+Aを押します。

上図のように"Add"というタイトルのメニューが表示されますので、"Armature"を実行します。

上図のように3Dカーソルの位置にアーマチュアが追加され、かつ、選択された状態になります。 なお、アーマチュアの先端はクマの内側に位置しているため見えていません。
アーマチュアが見えないと作業できないので、アーマチュアが透過表示されるよう設定を変更します。 Propertiesのタブをオブジェクトデータのプロパティを編集するためのタブに切り替えます。

上図のようにPropertiesのObject Data Propertiesタブをクリックします。

上図のようにObject Data PropertiesタブにあるViewport DisplayパネルのIn Frontチェックボックスをオンにします。

上図のようにアーマチュアが透過表示されます。
ではここで、ボーンについて説明しておきます。 現在の表示倍率では表示が小さすぎて見づらいので、キーボードのテンキーの+(プラス)を4回押してズームインします。

上図のように3Dカーソルの位置から上に伸びるようにボーンが見えます。 見ての通り、ボーンは、片側が太くもう一方が細くなっています。
ここで、ボーンの両端の名称を説明しておきます。

上図のように太い方(根本)がルート、細い方(先端)がチップと呼ばれます。
では、作業に戻りましょう。 まずは、現在のボーンを小さくします。 このボーンは腰のボーンとしますので、このままでは大きすぎるのです。
なお、アーマチュア全体ではなくボーンの単位で編集するにはエディットモードで作業を行う必要があります。
では、オブジェクトモードからエディットモードへ切り替えます。 キーボードのTabキーを押します。

上図のようにエディットモードに切り替わります。
ではここで、ボーンに注目してください。 ボーンの先端がオレンジ色になっていますが、オレンジ色は選択されていることを表しています。 つまり、現状では、ボーンの先端が選択されているということです。
ボーンには3つの選択状態があります。 1つ目はボーン全体が選択された状態、2つ目は根本のみが選択された状態、3つ目が先端のみが選択された状態です。

      上図のようにマウスの左ボタン( )を押した位置によってボーンの選択状態は変わります。
)を押した位置によってボーンの選択状態は変わります。
    
      では、作業に戻りましょう。
      ここでは、ボーン全体を選択します。
      ボーンの中央部分をマウスの左ボタン( )でクリックしてください。
)でクリックしてください。
    

上図のようにボーン全体を選択します。
では、選択中のボーンを0.4倍に縮小しましょう。 キーボードのSを押し、続けて、0.4 -> Enterキーを入力します。

上図のようにボーンを0.4倍に縮小します。
次に、ボーンを移動します。 現状、股の位置にボーンがありますが、これを腰の位置に移動させるためです。

上図のようにボーンを上方向に0.6だけ移動します。
では、続いてボーンを追加していきます。 現状、ボーンが1つしかありませんが、これでは変形のさせようがありません。 クマの胴体、手足、頭のためのボーンを追加します。
ただし、ボーンを追加する前にやっておくべき作業があります。 ボーンが左右対称で作成されるようにする設定です。 この設定は、人間の骨格のようにボーンが左右で対となる場合に便利です。
3D Viewport上で、キーボードのNを押します。

上図のようにサイドバーが表示されますので、Toolタブをクリックします。

上図のようにサイドバーのToolタブのOptionsパネルにあるX-Axis Mirrorチェックボックスをオンにします。
これで、ボーンを左右対称に追加することが可能となりました。 なお、もうサイドバーは使用しませんので、キーボードのNを押して折りたたんでおきます。
では、ボーンを追加しましょう。 まずは、背骨のボーンを追加します。 なお、ボーンは押し出しで追加していくのが基本です。 押し出しで追加することによって、押し出し元のボーンと連結されたボーンを追加することができます。

上図のようにエディットモードのままで、腰のボーンの先端を選択します。
では、押し出しでボーンを追加しましょう。 キーボードのEを押します。

上図のように見た目には変化はありませんが、選択中のボーンの先端から新たなボーンが押し出され、移動可能な状態になっています。 キーボードのカーソルキー(↑↓←→)、もしくはマウスの移動で、押し出されたボーンを移動することができます。
では、新たなボーンを上方向に0.2だけ伸ばしましょう。 キーボードのCTRLキーを押すことで正確に0.2だけ移動することができます。

上図のように上方向に0.2だけ移動します。
同じように、長さが0.2のボーンをあと2本追加します。

上図のように合計4本のボーンとなります。 これで背骨のボーンの追加は終わりました。
次に頭のボーンを追加します。 同じく、押し出しでボーンを追加します。

上図のように頭のてっぺんまでのボーンを追加します。
続いて、胸から肩・腕・手先までのボーンを追加します。 なお、押し出しではなく、分岐押し出し(Forked Extrude)の機能を使います。 分岐押し出しでは、左右対称のボーンが追加されます。
では、分岐押し出しで左右対称のボーンを追加しましょう。 まずは、肩のボーンからです。 押し出し元となるボーンの先端を選択します。

上図のように下から4本目の背骨のボーンの先端を選択します。
 )で押すと、優先的に先端が選択されます。
      頭のボーンの根本が選択される心配はありません。
)で押すと、優先的に先端が選択されます。
      頭のボーンの根本が選択される心配はありません。
    では、分岐押し出しを実行します。 キーボードのSHIFT+Eを押してください。 新たなボーンが左右対称に押し出され、移動可能な状態になります。

上図のように押し出されたボーンの先端を肩の位置まで移動します。
さらに、上腕のボーンを追加します。 なお、キーボードのSHIFT+Eではなく、キーボードのEを押すだけで左右対称のボーンを追加することができます。

上図のように押し出されたボーンの先端を肘の位置まで移動します。
同じように、前腕のボーンと手のボーンの計2本のボーンを追加しましょう。

上図のように手首までと手先までのボーンを追加します。
続いて、腰から足先までのボーンを追加します。 まずは、尻のボーンからです。
まず、押し出し元のボーンの根本を選択します。 先端ではなく、根本ですので注意してください。

上図のように腰のボーンの根本を選択します。
キーボードのSHIFT+Eを押します。 新たなボーンが左右対称に押し出され、移動可能な状態になります。

上図のように押し出されたボーンの先端を足の付け根の位置まで移動します。
同じように、大腿のボーンと下腿のボーンの計2本のボーンを追加しましょう。

上図のように膝までと足首までのボーンを追加します。
残すは、足のボーンのみとなりました。 ただし、足のボーンを追加する前に、既存のボーンの親子関係の調整を行います。 実は、尻のボーンは、押し出し元である腰のボーンとはつながっていません。
試しに、腰のボーンを選択して移動させてみてください。

上図のように腰のボーンから上は連動しますが、尻のボーンから下は切り離されています。
では、キーボードのCTRL+Zを押して移動を取り消してください。
切り離されている理由は、尻のボーンは、腰のボーンの根本から押し出したためです。 先端から押し出されたボーンは、押し出し元のボーンと連結された状態で押し出されます。
一方、根本から押し出されたボーンは、連結されずに押し出されます。 そのため、親のボーンとは連動せず、親が移動しても子は置いてけぼりです。
これを修正し、親のボーンと連動するように設定します。 ただし、連結はできません。
連結は先端と根本を結合するものであり、先端同士や根本同士は連結できません。 そこで、ここでは、尻のボーンが腰のボーンの子となるよう親子関係を構築することで連動させます。
ボーンに親子関係を持たせるには、まず、対象となるボーン(複数)を選択しなければなりません。 その際、選択の順番は非常に重要で、まずは子となるボーン(複数可)を選択し、最後に親となるボーンを選択する必要があります。

上図のようにまずは尻のボーン(2本)を選択します。
続けて、腰のボーンを追加選択します。

上図のように腰のボーンを追加選択します。
尻のボーン(2本)と腰のボーンが選択されていることを確認し、キーボードのCTRL+Pを押します。

上図のように"Make Parent"というタイトルのメニューが表示されますので、"Keep Offset"を実行します。
これで、親子関係が構築されました。 試しに、もう一度、腰のボーンを選択して移動させてみてください。

上図のように親子関係の構築前と同じく連動していません。 ただし、腰のボーンと尻のボーンとの間に破線が描かれています。 この破線は、親子関係が構築されていることを表しています。
現在はエディットモードで作業しているため、親子関係を構築しても連動しません。 しかし、後ほど利用するポーズモードであれば問題なく連動しますので問題ありません。
では、キーボードのCTRL+Zを押して移動を取り消してください。
ボーンの追加の作業を続けましょう。 ただし、足のボーンはまだ追加しません。 足のボーンを追加する前に、既存のボーンの位置の調整を行います。
現在、正面図の視点で作業をしています。 そのため、アーマチュアの各ボーンは正しい位置に配置されているように見えます。 しかし、側面図や上面図で見てみると、ボーンの位置がクマのメッシュとはズレていることがわかります。
キーボードのテンキーの3を押し、視点を側面図(右側)に移動します。

上図のように手のボーンがメッシュに収まっていません。 また、足のボーンもメッシュの中心からズレています。
同じように上面図からも見てみましょう。 キーボードのテンキーの7を押して上面図の位置に視点を移動します。

上図のように手のボーンがメッシュに収まっていないことがわかります。
引き続きエディットモードのままで、各ボーンのズレを修正してください。 なお、左右対称になっているボーンは、片方を動かせばもう片方も連動して動きます。 そのため、両方を動かす必要はなく、片方だけ動かせば済みます。
ボーンの位置を修正したら正面図、側面図(右側)、上面図で確認しましょう。 まずは、キーボードのテンキーの1を押して正面図の位置に視点を移動します。

上図のようにボーンがメッシュに収まっていることを確認します。
キーボードのテンキーの3を押して側面図(右側)の位置に視点を移動します。

上図のように手や足のボーンがメッシュに収まっていることを確認します。
キーボードのテンキーの7を押して上面図の位置に視点を移動します。

上図のように手のボーンがメッシュに収まっていることを確認します。
では、最後のボーンとなる足のボーンを追加します。 キーボードのテンキーの3を押し、視点を側面図(右側)に移動します。

上図のように側面図(右側)に視点を移動します。
続いて、押し出し元となるボーンの先端を選択します。

上図のように下腿のボーンの先端を選択します。 なお、左足側だけ選択すればよく、右足側を選択する必要はありません。
キーボードのEを押します。 新たなボーンが押し出され、移動可能な状態になります。

上図のように押し出されたボーンの先端を足先の位置まで移動します。
これで、必要なボーンが揃いました。
アーマチュアとはメッシュに埋め込む骨格のことで、関節を曲げることでメッシュを変形させることができます。 実際に骨格を持つ生き物のモデルに動きをつけるには最適です。
なお、アーマチュアは、1本以上のボーンが集まったものです。 作成直後のアーマチュアにはボーンは1本しかありませんが、押し出しでボーンを伸ばすことができます。
左右対称のボーンを作る場合は、X-Axis Mirrorチェックボックスをオンにし、SHIFT+Eで分岐押し出しを行いましょう。
| 操作/コマンド | 説明 | 
|---|---|
| E | 選択中のボーンを押し出す | 
| SHIFT+E | 選択中のボーンを分岐で押し出す |